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脱原発のために力を尽くす世界の皆さまへ      

 

 原発事故から丸8年の月日が経ちますが、変わらず福島に関心を寄せ、応援をして下さり、ありがとうございます。そして世界中の原発をなくすためのご努力に感謝致します。3.11が近づくと当時を思い出し、胸がざわつきます。そして今なお、事故によって起きた理不尽と苦しみが、終わらずに続いていることを再認識します。

 

 昨年は、私にとって大きな一年となりました。2012年に告訴し強制起訴となった、東京電力元幹部の原発事故の責任を問う刑事裁判が35回も開かれ、その傍聴に明け暮れました。公判の中で、今まで闇に眠っていた多くの真実が明らかにされました。地震や津波の権威ある専門家たちで構成される政府機関が公表した予測では、福島県沖で巨大な地震津波が起きることは、十分注意すべき確率だったこと、それを受けて東電社員たちは津波予測の計算を行い15.7mの津波高を得て、具体的に対策も考えていたこと、3人の被告人はその情報を受ける様々な機会を持ちながら、対策を何もせずに原発を運転し続けたこと。それらが多くの証言、メール、議事録などの証拠から浮かび上がってきました。それに対し、被告人らは「見ていない、聞いていない、記憶にない、自分には権限がない」などと無責任な主張を繰り返すばかりでした。昨年末、検察官役の指定弁護士は論告で「被告人らは自らの事故の責任を否定し、他者に責任を転嫁しようとする供述ばかり」「原子力事業者の最高経営層に属するものの態度としては、到底考えられない」と指摘し、「被告人らに有利に斟酌する事情は何一つない」として、3人に業務上過失致死傷罪の上限となる禁錮5年を求刑しました。3月12日の東電側の最終弁論で結審し、判決は夏ごろになるでしょうか。事故を起こした企業の責任がきちんと問われ、これ以上悲惨な原発事故がもう二度と起きないように、裁判所が厳正な判決を下すことを心から願っています。世界からも関心を持って見つめて下さい。

 

 さて、現在の福島の状況ですが、やはり新たな問題が起きています。東電敷地内のタンクにたまり続けるトリチウム汚染水の処分方法が検討され、海洋放出をすべきだと原子力を規制する立場の規制委員長が述べました。それに対し、経産省が開催した説明・公聴会では多くの市民が意見を表明し、汚染水は海洋放出をせずに陸上保管をするべきだと訴えました。もちろん漁業者も徹底抗戦の構えです。しかし、それらの声は昨年12月28日の汚染水に関する経産省の小委員会の議論では全く反映されませんでした。

 

 また、事故後福島県内(避難指示が出た12市町村以外の区域)に設置されたモニタリングポスト2400台の撤去の方針がやはり原子力規制員会から出されました。モニタリングポストの継続配置を求める市民の会が設立され、子育て世代の母親たちも含め多くの住民たちが各地での説明会で撤去に反対する声をあげています。県内の約1/3の自治体も撤去をしないでほしいという意見書を国に出しています。

 

 除染土を再利用しようとする実証事業では、市道に埋められる計画は住民の反対で中止になったところもありますが、同じような計画が別の市で進められています。帰還困難区域の農地のかさ上げ材としての再利用計画が飯舘村では進められています。

 

 昨年、国連人権理事会の特別報告者が、子どもや出産年齢の女性に対しての避難解除の基準をこれまでの年間20mSv以下から年間1mSv以下まで下げることや、無償住宅供与などの公的支援の打ち切りが、区域外避難者らにとって帰還を強いる圧力になっていることなどを指摘しましたが、福島県は区域外避難者に対し打ち切り後に提供していた県の支援策も今年3月で終了し、今後公的な支援は行わないとしています。また、未だ帰還困難区域を含む浪江、富岡、葛尾、飯舘の4町村に対しても2019年度末までに仮設住宅の提供が全て終了すると福島県知事が発表しました。

 

 事故当時18歳以下の甲状腺検査では、現在、甲状腺がんと診断された人が166人、がんの疑いが40人、合わせて206人と発表されています。しかし、昨年の甲状腺評価部会において、その中には含まれていないがん患者が11人いることが公表されました。また、県民健康調査を通さずに甲状腺がんを福島県立医大以外で手術している人が、民間の支援団体によって把握されていますが、県は県民健康調査以外の事例の調査はしないとしています。評価部会は今後原発事故との関連の検討に入るとしていますが、これでは、原発事故後の福島県内の小児甲状腺がんの正確な罹患数はわからず、正確な評価はできないと思います。検討委員会では、過剰診断による見つけなくてもよいがんを見つけてしまうとか、学校での一斉診断が人権侵害にあたると主張して、検査の縮小を提案する委員もいますが、継続の重要性や早期発見と早期治療を主張する委員との間で激しい議論となっています。今年になり、事故当時双葉町に在住していた11歳の少女の甲状腺等価線量が100mSv程度になると国の研究機関・放射線医学総合研究所の2011年5月の会議で報告されていたことが、東京新聞で報道されました。国は今まで「100mSvを被曝した子どもはいない」と発表していましたが、福島県伊達市の被曝線量を3分の1に見積もった論文がその間違いを指摘されているなど、被曝と健康被害の関連はますます隠蔽が疑われる状況になっています。

 

 皆さま、日本でもこの重苦しい現実の中で、それに抗おうと市民たちや心あるメディアが必死で頑張っています。遠くに、福島を想いともに歩んでいる仲間がいることが、私たちにとって力強い励みとなっています。世界の原発や核施設をなくし、安全で心地よく生きられる世界を創っていくために力を合わせていきましょう。

 

2019年3月

 

武藤類子

福島原発告訴団団長

原発いらない福島の女たち

 

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